何度身体を重ねても慣れることのない己の声も、今日は降り止まない雨に助けられている。

とは言え、執拗に繰り返し与えられる甘い舌先の刺激に、まだ優れない体調に因る熱も手伝い
いつもより更に敏感になっている。

瞳を閉じてしまうと全ての感覚が一点に集中してしまい、意識を逸らすのに必死だった。

「なぁ、景ちゃんがおかしなったんのはオレのせいやって自惚れていいの?」



「は…っ、自惚れんな、バ…カ…」

「じゃあなんであんなとこに座ってたん?」

眼鏡の奥の瞳が意地悪く見据えた。

「さ…、散歩…だ」

絞り出すように言ったその声は、「あっそ」と言った相手のその唇に塞がれた。

やがて舌が唇を割って入り、歯列をなぞって口腔内を貪る。

後頭部を掴まれ、より深くまで押し入られ息が上がるオレを弄ぶように、反対の手がシャツの上から
胸を掠めた。

「…んんっ…」

新たな刺激に苦しくもがいても重なる唇を離す気配もない。

(こ、の…眼鏡っ)

掴まれている後頭部の髪が乱暴に掻き乱され、終わらない口づけが何度も角度を変える。

我がもの顔で口腔を掻き回される。

ふいに解放され、飲み込めずにいた唾液が薄く開いた口からだらしなく零れた。