好きの現実(リアル)


もう皆が帰ってしまった教室。

特別意味もなく校庭が見える窓辺に2人並んでいた。

オレンジの景色が眩しい時間・・・。

「好きやで。景ちゃん」

跡部の柔らかい髪をそっと自らに引き寄せ、忍足はそう言った。

その定義は曖昧で、何とも中途半端だと感じる。

「…それって、どの位だよ?…分かんねぇ」

「分からんて…、何、なんかオマエに説明せなアカンの…」

指先でこめかみを押さえてため息ををつき、面倒くさそうに「どこまでもオレ様やなぁ」と、余計な一言を洩らす。

「どれ位か言ってみろよ」

ちらり、と忍足の顔を横目で見遣る。

忍足は大きく伸びをしながら、自分より少し背の低い相手を見下ろした。

───この仕種を跡部がとても嫌っているのを分かっていながら、わざとするのだ。

口の端を左右に引き上げ微笑む。

「宇宙でイチバン好きやで…」

跡部は軽く舌打ちをし、

「バカ。分かるかよ、そんな例え。もっと伝わるように言えっての」

自分の好まない動きをされた事もあって、口調がキツイ。

そんなところも忍足は『可愛い』と感じている。

跡部の行動全てを見越して、こういう動きをとっているのだ。

策士である。

「─っ、…何考えてんだよっ。早くしろよ、てめぇ」

思わずにやついてしまい、気の短い跡部に催促される。

「それが人にモノ頼む言い方かいな…。ま、ええわ」

2度目のため息を浅くついた。

『宇宙』なんて漠然としすぎていて、分からないと言いたいようだ。

(普通ならここで喜ぶんちゃうんか…。…このお姫さんは難しいわ…)

忍足は窓枠にもたれ後ろ手に肘をつき、誰もいなくなった教室を見て、

「この教室くらい?」

とりあえず目に見て分かる範囲で伝えるつもりらしい。

「バカか、てめぇ。何だよそのスケールの小ささはッ」

跡部は眉をしかめ、その回答に納得がいかないようだ。

「イチイチうるさいなぁ跡部は…」

「てめ…っ…」

先の言葉はそのまま忍足の唇にのみ込まれてしまった。

「…っ、…な、何しやがるっ」

しばらくの間拘束された唇を無理矢理引き剥がした。

予想外の行動に跡部の頬は赤くなり、息を荒げている自分とは正反対にその張本人はとても余裕がある。

「…答えになってねぇ」

「オマエには、何ゆうても分からんやろから…な。言葉で分からんのなら身体に分からすまでやで?」

「ふ…ん」

挑発的に視線を絡ませた。

窓から鮮やかな色が更に差し込み、2人は夕焼けの色に染まっていた。



                           おわりですっ(逃)

☆なんだコレ。
 思いつきで書くとおかしいな…