雨音がきこえる #番外編3


誰にも悟られてないって思ってる。

そんなわけないじゃん。

オレ…跡部のことずっと見てた。

ちっちゃい時から後をくっついてさ。

きっと誰より跡部を知ってる。

跡部って強いけど弱いんだよ。

…知ってた?跡部…



忍足がいなくなって2週間経っていた。

授業中も雨を眺めてる事が多くなってた。

オレがいつも寝てると思って油断してる。

後ろの席で跡部からオレは見えないけど、オレから跡部は見えるんだから。


もともと無駄な筋肉がなく細い身体だけど、最近は・・・

そう思ったら跡部の肩をそっと撫でていた。

ちょっとびっくりした顔で跡部が振り向いた。

「…後ろ姿の線がぁ、細くなった。アトベ痩せたでしょ…やっぱ…忍足のせい?」

整った顔が一瞬だけ歪んだ。

「バーカ、そんなんじゃねぇよ」

何事もなかったように優しく瞳を細めて言葉を繋げた。

「何もねぇから…気にすんな」

笑ったつもり?

キレイなオレの大好きな跡部の笑顔が曇っていた。




そして数日経ったある日、遂に跡部は部活中に倒れた。

あの樺地が大きな声で跡部の名前を呼んだ。

亮ちゃんや鳳も。

倒れたその姿はいつもより小さく見えて…。

バカ。

忍足のバカ。

…何やってんの…。


倒れた跡部は勿論樺地が保健室まで運んだ。

何とか無理やり樺地を帰した。

ベッドに寝ている跡部のそばにガタガタと椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。

(忍足もあんな風に跡部を運ぶのかな…)

白い顔で眠る跡部。

手首ほっそいし…。

そんな事を考えている内にうとうと寝てしまっていた。

どの位保健室にいたのか分らないけど

「ジロー?」

名前を呼ばれて目を擦りながら顔を上げた。

「あー…アトベ」

もう辺りはうす暗くなっていた。

「悪かったな…」

ボソッと跡部がそう言った。

今まで見たこともない顔をしていた。

言い表わし様のないその顔に見愡れてしまった反面、とんでもなく複雑な気持ちになった。

「それってやっぱ忍足でしょ」

跡部が倒れるなんてありえない!

なんでそこまでなっちゃうの…。

最近はもう見せたりしないけど、昔はより上を目指すために歯がゆくて泣く事だってあった。

でもそれは全部自分に対することだけで。

対個人においてそんな弱い部分は見せたことない。

悔しい!

オレが一番跡部に近い存在のつもりでいた。

───今まで は。

特別だと思ってた。

優しい大好きな跡部。

オレがもしいなくなっても、そんな顔してくれる?

「そんなに忍足が好きなんだ?」

「…え?」

跡部の顔を覗き込み、力いっぱい引き寄せて口唇に触れた。



                           続く

☆本編と照らし合わせるとアラが…;
 もうちょっとだ!
 確実にジロちゃんが気になるのはミュキャスのせいだよ〜(笑)
 Takuya可愛過ぎ!